言い訳する大人

私の職場は未だに昭和臭の漂う平均年齢高めの営業所で、取引先は林業関係や土木関係の会社と団体が主である。
そんな昭和な会社で昨年異動があり、私が担当する営業3人のうちの1人(A氏としよう)が同じ市内にある本店に移ることになった。もともとその仕事をしていたおじさんが退職したためである。
こちらは欠員になるのだが人員補充が遅れに遅れ(上がなかなか動かなかったので)、A氏が新しい仕事に忙殺されている中でやっと新人が入った。
A氏はアラフォーだがほか3人の営業のうち2人が60代、残る1人も50代半ばという高齢化会社なので、今後のことも踏まえて3人の新人が採用され、A氏の営業先を引き継ぐことになったのがA氏と同い年のB氏、前職は某黒っぽい飲食チェーン店の社員。
A氏があまりに忙しく、新たな担当エリアがまるで逆方向なのもあって、B氏への引き継ぎはロクにできず、場所だけは教えてもらってあとは電話で指示を受けて動く、という形になってしまった。
一緒に採用された2人は、60代営業にそれぞれ付いて仕事をする形で、まぁそれはそれで、1人は問題のある60代なのでそこに付けられた新人(これもアラフォー)はかなり苛められしんどい日々を送っているのだが、なんとかんとかがんばっている。

B氏が引き継いだ取引先はとても交通の便が悪く、店舗もないようなエリアもあるので、なかば便利屋状態で、我が社の取り扱いのない品物もよく頼まれ、探して探して納品するということが多い。
ほかの営業はノータッチで聞いても分からないので、私がフォローするしかないだろうと、かなり神経を使い時間も割いてB氏のサポートをしてきた、つもりだった。
ところでこのB氏、わりと感情が顔に出やすく、なにか困ってるなと横から助言するとうるさそうな顔をしたりムッとしたり、わかってますとか大丈夫ですとか口癖のように言う。
それは客先でも出てしまうようで、入社そうそう、ちょっと無理な依頼をされた客先であからさまに態度に出したらしく、A氏に速攻でクレームが入ったこともあった。
そのくせ言いにくいことをなかなか言わない。
客先から前回と同額でと言われた商品がとても営業努力で吸収できないレベルで値上がりして、その金額では厳しいから話してきてくださいと言っても、「まだ話してません」「事務所にいなかったので」とズルズル引き延ばす。
電話で話せるだろうに…と思いながらギリギリまで待ち、仕入れ先に無理を言って急遽納品、という事態も何度かあった。

そんなB氏の取引先、今年の頭くらいからどうも支払い状況がよくない。
担当者が変わったとはいえそれまできちんと支払ってくれた企業まで遅れていたので、2月ごろ、未入金リストを渡して、どうやって回収するのかわからないというから、A氏に相談するように話をした。

だがしかし、彼は実質何もしていなかった。
それどころではない、なんと昨年の9月〆分から請求書を渡していない客先がいくつもあったのだ。
昨年の9月といえば、ハワイのパブリックビューイングと重なった週末、土曜日なら余ってるよと何人か声をかけてもらったのに、請求書出さなければいけないから休めないと断って、日曜日は見つからなくて、結果見られなかった哀しい想い出のある〆日である。
もはやこれは私怨だが、本気で泣きながら出勤して必死で整えた請求書を届けてないなんて、もう脱力するしかない。
もちろん9月だけでなくそれ以降も渡してない客先がゴロゴロあり、6月頭にA氏が客先に詫びを入れて支払いの確約を取ったのにも関わらず6月分も渡していなかった、というありさま。
基本請求書は営業が持参するか郵送なので、6月分は3回ほど「送る分はこちらに渡してください」と声をかけたが、「まだ見てないので」「明日やります」と1週間寝かせた挙句に持ち出して、でも実は届けていなかったのだ。
あちこち頭を下げて回ったA氏も私も怒り心頭。
ついには1社もう支払わないと通告される事態となり、A氏とうちの営業所だけでは収められなくなって、社長に報告せざるを得なくなった。

社長の激昂ぶりは火を見るよりも明らかで、当初は本店の若手と入れ替えると言っていたが、結局そのままA氏がもう少しフォローする形でB氏が継続することになった。
しかしこのB氏、「なんで請求書持ってかなかった?」と聞かれると「どうすればいいのかわからなかった」と答え、「何が不満?」と聞かれると「僕だけ上の人(教えてくれる営業)がいない」「誰も教えてくれない」という。
請求書渡すのはみな同じタイミングなので、わからなかったら隣りの営業に聞けばよいじゃないか。私は毎月請求書出して引き出しに入れたら全員に「請求書出てるのでチェックお願いします」と声をかける。おじさんたちは持参する分を抜いて残りは送って、と私に返してくる。そのやりとりの場にB氏もいるのである。


先月分の請求書をいくつかB氏から回収して郵送したのだが、その相手から何件○月分の請求書もらってませんと連絡が入って謝り倒して再発行して送って、を繰り返したかわからない。
営業所の所長に、まだ残ってるのがあるなら全部返してほしいと言って確認してもらったが、本人はもう全部渡した、残りはないと言い張っていた。
(なのにその日も届けてない電話がきたという)

新卒の18、9の若い子なら、何も知らなくて当然、どうしていいかわからなくて当然だからある程度周りも声をかけたり教えたりするだろう。
40近くにもなって、それなりに社会人として生きてきたはずの大人に、誰が1から教えるというのか。新しい仕事でわからないことだらけなのはみんな一緒だ。恥ずかしいかもしれないけど、逆に入りたてなら知らなくても許されることはあるのだから、どんどん聞いて知識をつければいい。
なのに、二言目には「僕だけ1人だから」なのである。

…時間も神経も使ってサポートしてきた俺の立場な?(笑)

というわけで、昨日は朝から社長やら取締役やら経理部長やらが来てB氏を追及する会(何)を開催しており、結果届けてない請求書は自宅に置いてあると白状したらしく、社長は血管切れそうなほど怒りまくって、事務所に戻っても興奮が収まらず怒鳴り散らし私まで責められ(あれ以上どうしろと!!)本当にぐったりしたのである。
しかしB氏本人から、迷惑かけてすみません的な言葉はまったくない。

ふざけるな。
いい大人が、言い訳ばかり並べて嫌なことを全部先延ばしした結果だよ。

私怨も含めて(笑)、この1年あまりの努力を蔑ろにされた気がして、B氏を背中から蹴り倒したい気持ちでいっぱいの週末であった。
(たぶん私の脚力では蹴り倒せないが)